金魚愛好家の皆様こんばんは。
我が家でも飼育している金魚の品種「桜錦(さくらにしき)」ですが、らんちゅう型の体型にモザイク透明鱗が美しい金魚です。
過去に、その「作出」の経緯に関して作出者の方のインタビューを読んで興味深かったので、掲載されていた書籍等を探していたんですが、、、なんせ部屋が散らかっておりまして、発見に至らず。
先日やっと見つかりました。本ではなくネットでしたので見つからないわけです。
読み直してみても、金魚の作出に携わる方の意地と誇りを感じる素晴らしいインタビュー記事でした。
目次
【桜錦愛好会】
インタビュー記事が載っていたのは「桜錦道ー桜錦愛好会ー」という桜錦愛好会さんのHPの記事でした。
そりゃ探しても見つからんで。
「夢の中へ」ですな。分からない方も多いかな?
しかし桜錦「道」です。道ですよ道。
過去記事で合気道の達人塩田剛三さんが技を極める為に金魚の動きを目で追い続けた話を書きましたが、そんな世界でしょうか?(どんな世界だよ)
とにかく、剣道・柔道・空手道や書道、花道の様な「道」なのです!
私などは適当にやってますからね。いいんですよ私は適当で。全部が全部私みたいな適当ではだめですが、そのジャンルで少数でも「道を極めようとする人」がいれば、適当人間でもそこに乗っかって楽しめます。
(お分かりの通り謙遜ですよ。私、適当人間を装っているだけですから。念の為。尊敬する人物は高田純次ですが。)
【桜錦作出の経緯】
《弥富の深見光晴氏作出》
金魚の産地として有名な弥富市にある「深見養魚場」の深見光晴氏が作出者です。金魚の世界では大変有名な方です。
深見養魚場は現在後継者の方が継がれています。
《作出の経緯》
詳細はリンク先を参照戴くとして簡単にまとめます。
[江戸錦の肉瘤を出したかった]
作出は昭和44年(!)から開始、肉瘤の発達した江戸錦を作るため江戸錦とランチュウとを掛け合わせたとのこと。
江戸錦
しかしながら出来た子たちは肉瘤が出てこないので、その子たちをもう一度ランチュウと掛け合わせたところ、ようやく肉瘤の良く発達した江戸錦が得られたとのこと。
二回らんちゅうの血を入れたんですね。
[江戸錦と呼べない!「桜錦」の誕生!]
しかし、できた子のなかの120匹くらいが、江戸錦の特徴である浅葱色(薄い青)や墨(黒系のポツポツ)が抜けて「赤白の江戸錦」になってしまったのでした。
これでは江戸錦とは呼べませんし、かと言って江戸錦の特徴である「透明鱗」は受け継いでいますのでらんちゅうとも違います。
光晴氏は、「弱ったな、、、」と思いつつも、この金魚達を見つめ春に「桜」が咲く時の、三分咲きとか七分咲きのような感じを受けて「これはこれで綺麗だな」と思ったとのこと。
そして光晴氏は、この金魚の第一印象であった「桜」と、江戸錦の「錦」をとって「桜錦」と名付けて市場に出すのでした。
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[「なんじゃこりゃ」「どうせ突然変異でしょ」]
市場で桜錦を見た問屋さんは「なんだこれは?」「どうせ突然変異でしょ」と冷ややかな反応だったと言います。
この反応に対して光晴氏はインタビュー記事で語っておられます。
「ワシは生産者の意地としてこれは続けていかなきゃいかんと思ったんです(笑)」
(笑)とありますが、恐らく眼は笑っていなかったでしょうね。もちろん記事にそんなことは書いていませんが。
意地というか誇りでしょうか。どんな仕事でも誇りを持って取り組む人間とそうでない人間は全然違うんでしょうね。
《「固定化」も大変》
[桜錦同士を掛け合わせる]
光晴氏は意地と誇りにかけて桜錦の固定化(突然変異で生まれた種類の特徴を、何代でもその子孫が保持し続ける様にすること)に取り組みました。桜錦同士をどんどん掛け合わせていったのです。
しかし、今度は逆もどりで墨が入るなど江戸錦の特徴が復活してしまい、紅白の「桜色」が出ない「江戸錦の出来損ない」ばっかり出来てしまうことになります。
[もう一度らんちゅうの血を入れる]
桜錦同士を掛け合わせたのに江戸錦に戻ってしまう状況で光晴氏はもう一度らんちゅうを掛け合わせます。三回目ですね。
これでやっと江戸錦の特徴を消せることに成功しました。
光晴氏は得られた「桜錦同士」をどんどん掛け合わせていきようやく固定化に成功します!
《新品種「桜錦」として承認》
[日本観賞魚振興会から新品種として承認される]
この様な形で昭和44年から取り組まれた桜錦の作出と固定化ですが、光晴氏によって市場に出し続けられたこの品種は平成8年に日本観賞魚振興会から新品種「桜錦」として承認されたとのこと。
何年経ってんねん!
その後のこの品種の人気ぶりは金魚好きの方に説明する必要もありません。
長い道のりですねー。
正に深見光晴氏と意地と誇りが生み出した金魚!
私の子は「墨」があります。江戸錦の特徴を少し受け継いでいます。いいんですよ。お店で高く売ってた桜錦でも少し墨はありましたし〜
気にしまへん
[「命名」に対する書籍の記述]
川田洋之助氏の著書によると「弥富の深見光晴氏が10年かけて固定。平成8年に弥富の伊藤恵造氏により「桜錦」として命名」といった旨の記述がみられますが、インタビュー記事を見ると違うようですね。
記事で深見さんは桜を連想し桜錦という名前で市場に出していたことを語っておられます。深見氏ご自身の命名ですね。
記事に伊藤氏の名前は出てこないのですが深見氏の発言から判断するに
「深見氏が作出し、自身で「桜錦」と命名、市場に出す→固定化に成功→日本観賞魚振興会理事で弥富組合長でもある伊藤氏が振興会に働きかけて新品種として認められる」
といった流れではないでしょうか。あくまで私の想像ですが。
深見さんが苦労して作って名前もつけたと考えた方が素敵です。
[やっぱり「新品種」「承認」は適当?]
ただ、深見氏も「承認されたからといって、認定書とかそういったものはもらってるわけではないけど(笑)」とおっしゃっている通り、新品種の認定や承認など適当なもんなんでしょうね。
学術的にDNA分析をする訳でもなく、また「認定」と言っても工業製品の様な特許申請や取得がある訳でもない。
何かの団体が決めたり、世間(観賞魚をとりまく世間)が認めればそれで「新品種」なんでしょう。
レモン和金はどうかな?
いいと思いますよ!
学術的なエビデンスや公的な認証など色んな金魚の品種を楽しむ上で全く関係ないですもん。
【終わりに】
《深見さんのインタビュー良かったです》
深見光晴さんのインタビュー記事大変ロマンを感じました。
この種のお話は好きですね。今回は金魚でしたが、お花なんかも素晴らしい逸話が沢山あります。
また、もっと日本人の生活に大切な「米」などにおいても冷害等に強い新品種の作出に関する苦労は色々なメディアで知ることができます。
動物・植物関わらず昨今では遺伝子組換え技術で比較的短期間で簡単に有益な新品種の作出を成し遂げることができますが、やはり昔ながらの「掛け合わせ」の方がその作出経緯には魅力があります。
日本では悪者扱いされる「遺伝子組換え食物」。昔とある機会にその元締め?であるアメリカ「モンサント」社の研究員と話したことがあるのですが、彼は
「長期間苦労して「何代もの掛け合わせ(ハイブリッド)」でDNAが変化していって新品種が生まれるのと、直接DNAをいじってやる「遺伝子組換え技術」は本質的には同じ。同じ成果を出すなら遺伝子組換えの方が早くできる。コストも労力も掛からない。」
とおっしゃってましたね。本音は「なんで日本人そんなに遺伝子組換えを気にするの」と言いたかったんでしょ。
知らんがな。
まあ、遺伝子組換え作物の安全性に関する議論は別にして、少なくとも私は
遺伝子組換えで生まれた金魚の新品種なんて嫌やん!
と思います。
深見さんが苦労された話の方がかっこいいですね。
苦労してササニシキやコシヒカリを生み出した話の方が感動します。
偏見でしょうか、、
遺伝子組換え技術を確立する苦労もアカデミックな面で感動があるっちゃありますが。
(モンサントはGMOだけなくハイブリッドによる種子の開発も行っています。私が話した当時なので今はどうか不明)
《新品種の作出に期待!》
私なんざ繁殖すらやってない適当飼育者で「作出」なんて口にも出せませんが、上級者の方は是非新品種の作出に挑戦して面白い金魚を生み出して欲しいです!
比較的近年でも「ミューズ」などの新しい品種も生まれてます。
金魚達人の皆さん!新しい金魚の誕生を期待していますよ!